くまもとの風合い KUMAMOTO no fuuai

くまもと手しごと研究所

協賛企業例

あつらえる。

~匠の技×アイデアで広がる可能性~

現在の茶道の原型を完成させた千利休は、茶道の心得を「四規七則(しきしちそく注1)」と説きました。互いに心を開き、敬いあい、シーンに応じたしつらいや装いで“いま”という時間をわかちあうなかで、地域の伝統工芸にふれる機会も多いといいます。今回は、たくさんの手仕事と日本のあらゆる文化が凝縮された茶道における、「あつらえ」の一例をご紹介しましょう。

※※表千家同門熊本支部前事務長:以下 前事務長 くまもと手しごと研究所:以下 事務局

50周年を記念して、肥後象眼をあつらえる

事務局:
記念品として、伝統工芸品のあつらえをなさったそうですね。
前事務長:
2014年に表千家熊本支部の発足50周年を記念した茶会を催すことになり、賓客へお配りする記念品をあつらえました。熊本には細川藩の御用窯として発展した陶磁器窯元も多いですから、これまでに髙田焼や小岱焼の茶碗を記念品にしたこともあります。そうしたこともあり、今回はあえて茶碗ではなく、菓子切りをつくることにしました。普段から携帯し、使っていただけるものにしたいと考えたのです。
事務局:
肥後象眼にと思われたのはなぜでしょうか。
前事務長:
国内に残る象眼文化は大きく分けて、3つ。京都の京象眼、石川県の加賀象眼、そして熊本県の肥後象眼です。一言で象眼といっても、それぞれに技法や世界観が異なります。ですから、熊本の伝統文化である肥後象眼の魅力を一人でも多くの人に知っていただきたいという思いもありました。
事務局:
こだわった点を教えてください。
前事務長:
今回一番大変だったのは値段でしょうか。記念品に使える予算は5千円くらいでしたが、熊本県伝統工芸館に展示されている肥後象眼の菓子切りは2万円台で、明らかに予算オーバーです。これは困ったなと思い、熊本県伝統工芸館に相談しました。肥後象眼は、武家の雅味を表現するものですから、地鉄に布目切りで金銀を施すのが本来の作り方です。今回は、鉄の表面にメッキを施し、金の分量も調整することで、予算内でできる工夫をしていただきました。
事務局:
デザインもすばらしいですね。
前事務長:
ええ。熊本市の市木はイチョウ。さらに、50周年記念の茶会を催す会場となる熊本城は通称「銀杏城(ぎんなんじょう)」とも呼ばれます。そこでイチョウの葉や銀杏の実をモチーフにデザインしていただきました。
事務局:
作家さんとの交渉は大変だったのではないですか。
前事務長:
作家さんの手配から予算の調整、デザインなどすべてを熊本県伝統工芸館にお任せできたおかげで、大変だと感じることはなかったですね。むしろ、出来上がりが楽しみだったくらいです。今回は820本というオーダー数もあり、ふたりの作家さんに制作をしていただいたのですが、その調整もしっかりとしていただくことができました。
事務局:
記念品を受け取られた皆さんの反応はいかがでしたか。
前事務長:
表千家の本部など、県外からのお客様もお見えだったのですが、皆さんとてもお喜びいただけましたね。熊本らしさの詰まった記念品でもあり、県内のお客様にも愛着を持って使っていただけているようです。

注1…四規七則とは
四規」=和敬清寂(わけいせいじゃく)の精神
和…互いに心を開き、仲良くすること
敬…互いに敬いあうこと
清…見た目だけでない、心の清らかさ寂…どんなときにも動じない心

「七則」=他人に接するときの心構え
茶は服のよきように点て
炭は湯の沸くように置き
冬は暖かく夏は涼しく
花は野にあるように入れ
刻限は早めに
降らずとも雨具の用意
相客に心せよ