くまもとの風合い KUMAMOTO no fuuai

くまもと手しごと研究所

協賛企業例

モノではなく心を贈る。

~社業×くまもとの匠が企業の文化を語る~

熊本県伝統工芸館 業務課長 坂本尚文様

贈り物には、心を贈るという文化があります。
細川候は江戸時代、参勤交代の折りに熊本から象嵌(ぞうがん)師を連れて江戸に上ったといいます。各地の諸侯も同じように自前の職人を連れて行ったことでしょう。
そこには各藩主が競争しつつも、その土地で産する素材と匠によって、独自の気持ちを贈答品の中に込めていました。
現代の私たちは伝統工芸品を贈答品にする際、どのように考えたらいいのか。伝統工芸館の坂本課長にお話を伺いました。

※熊本県伝統工芸館 業務課長 坂本尚文様:以下 坂本 くまもと手しごと研究所:以下 事務局

伝統工芸品を使ったギフトが増えてきました。

事務局:
熊本県内の多くの企業が伝統工芸品を使ってお客様に喜んでいただいているようですね。
坂本:
新聞社や放送局のイベントで、東京から来ていただいたゲストに熊本ならではの商品を贈りたいということがありまして、熊本のお箸をセットしたり、あるいはオリジナルでシオリを作ったりしたことがあります。また東京の大手の取引先がビルを新しくするにあたり、熊本の企業からご依頼いただき、そのビルの形をした大きな肥後象嵌の作品を作ったこともあります。また、新幹線の開通の折には、鉄道会社からの依頼で「みずほ」を表現する稲をあしらった肥後象嵌を制作したこともありました。そういうオリジナルではなくても自動車ディーラーさんが試乗記念品として小代焼の陶器をプレゼントされたり、金融機関の新しい建物の内覧会の引き出物として、小代焼のお皿を皆さんにお渡しになったこともあります。
事務局:
引き出物や記念品としてのご利用が多いのでしょうか。
坂本:
それだけではありません。たとえば醤油メーカーでギフト商品用に自社の醤油と熊本の陶磁器の醤油差しをセットにされたり、醸造メーカーでは出し酢と御猪口(おちょこ)をセットにしたり。そういう商品づくりの動きもあります。自社の製品と熊本の伝統工芸品を組み合わせて、新たな価値を作られているのです。
事務局:
自社製品と伝統工芸品のセットというのは面白いですね。
坂本:
先に話したように贈答品として熊本の伝統工芸品をお使いになる場合でも、その企業の歴史や文化と伝統工芸品をセットにしているわけです。そこには企業としての文化を、伝統工芸品を使って表現しようという気持ちが表れていると思います。 ほかの例としては、賓客をもてなす場合に熊本の伝統工芸品を使われたというケースがあります。会食の主催者が会場となるホテルと調整され、器やおしぼり、ランチョンマットなどを熊本の伝統工芸品で演出されました。余所(よそ)にない“おもてなし”ができたのではないかと思います。もちろんこのような場合には、おもてなしする方について綿密なリサーチが必要ですね。お客様の方が熊本の伝統工芸品に非常に詳しいということがあるかもしれません。
事務局:
伝統工芸品を贈る・伝統工芸品でおもてなしするという良さは何でしょうか。
坂本:
地域の素材、たとえば陶石、木材、そして地域の技術で作られたモノは地域の暮らしの道具です。このようなものは使えば使うほど味が出てきます。しかもそのモノの中にある地域の個性、たとえば木の色艶や手触りなどがどんどん深まってきます。伝統工芸品を贈るということは、熊本の時間が経つにつれ深まる価値を一緒に贈るということです。いま贈ったものは十年後も、二十年後も使い込まれる力を持っています。暮らしの身近なところで、世代にまたがって使うことができるので、企業からお客様へ伝統工芸品を贈るということは、将来にわたり、長く続くご関係をお客様と結ぶということではないかと思います。
事務局:
贈答品などを作る場合にはどのようなことに気をつけたらいいでしょうか。
坂本:
最初に送り先を決め、企業風土等を踏まえながら贈り物を考えます。例えば食卓を彩るものなのか服飾のアクセントとするものなのか。お渡しする先様に使っていただきたいシーンを考えたりすると、方向性が見えてくるのではないかと思います。私たちは自分たちを、そのようなニーズと作家さんとを結びつけるプランナーのようなものだと思っていますが、熊本にもっと多くのそのような役割を担う人が増えてくるといいなと思います。